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元論文

作成日:2024年5月17日

Prediction of tumor origin in cancers of unknown primary origin with cytology-based deep learning

目的:原発巣を細胞学に基づくディープラーニングによって予測する。
背景 :
CUPは病理学的に悪性転移と同定されるが、標準的な基礎診断アプローチではその起源を同定できない悪性疾患のグループである。CUPは人で診断される癌全体の3~5%を占めると考えられている。 免疫染色で同定される症例は30%未満であり困難な問題である。また腹水や胸水に遊離した腫瘍細胞が存在すると固有腫瘍のステージⅣの強力な証拠となる。 胸膜または腹膜の細針吸引による細胞診は通常、胸腹部転移の診断に重要な方法として用いられる。

研究内容:先行研究では、乳がんのリンパ節転移の検出前立腺がんのグリソングレーディングの予測胃がんの可能性の解釈などにAIモデルが利用されてきた。 しかしこれまでのモデルは組織学的な画像または全体画像に焦点をあたえたものであった。

なぜ細胞診は病理学的に難しいのか
細胞診は基本的に手術や針生検に耐えられない末期がん患者に適応される。その場合、胸水や腹水の検体はアクセス性に優れていて、がんの 発生部位を特定するのに有用である。しかしサンプリングの不適切さ、細胞の変性や異型性、検査者間のばらつきがあるため診断精度が最適でない。 原発不明癌の診断を難しくしているのは、そのとらえどころのなさである。

前処理
原発の臨床的または病理学的な裏付けを欠く、悪性腫瘍画像を除去する。空白または焦点の合わない画像を除外した。
トレーニングセット:
前処理をうけた19406枚の腫瘍画像と良性疾患の画像10477枚
テストセット:
・トレーニングセットを取得した病院と同じ四つの病院の10974人(12799画像)からなる3つの内部テストセット
・天津と煙台の病院からの外部テストセット
結果 : TORCHは癌診断でAUC0.953~0.991、腫瘍起源の特定で0.953~0.979を示した。強い汎化性能を示した

病理医との比較
若手病理医が42.6%(95%CI 38.2%-46.9%)と44.0%(95%CI 39.4-47.9%)、ベテラン病理医2名では69.7%(95%CI 66.3-73.5%)と57.0%(95%CI 52.9-61.2%)であったのに対し、 TORCHは78.8%(95%CI 75.4-82.0%)のトップ1精度を達成し、これは4人の病理医の精度を有意に上回った。

TORCHモデルフレームワーク

モデルの解釈性 : attention heatmapを利用して、モデルの予測結果を解釈した。
新規性:組織学的画像や全体画像ではなく、細胞学的画像データを解釈して腫瘍の起源を予測するAIモデルである点
感想:獣医療でもこういうAIが利用できるようになると、現場で病理検査に出すことなく、原発巣を予測することができ臨床的に非常に役立つと思った。 とくに悪性癌であれば進行が早いので迅速な診断ができるとかなり影響が大きいのではないかと思った。
参考リンク:
https://en.wikipedia.org/wiki/Ablation_(artificial_intelligence)