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元論文

作成日:2024年4月12日

CellOracleについて

目的:ネットワーク推論とin slicoの遺伝子摂動によるCell identityの解明
遺伝子発現レベルの絶対的な変化を予測するのではなく、identityの変化をモデル化する。

研究内容:
シングルセルマルチオミクスデータから推論される遺伝子制御ネットワークを用いて転写因子の摂動をインシリコで行い、その結果生じる細胞のアイデンティティの変化を摂動を受けていない野生型のデータのみを用いてシュミレーションする。
in slicoの遺伝子摂動は、
1. 細胞型または細胞状態に特異的なGRN構成する(マルチオミクスデータを用いたクラスタごとの正則化線形回帰モデルを利用)
2. 作成したGRNモデルを利用して、TF撹乱に応じた標的遺伝子発現のシフトを計算する。(遺伝子発現の絶対値ではなく、遺伝子発現のシフトを伝播する関数としてGRNモデルを利用)
3. cell-identityの遷移(おそらく細胞の異形成みたいなもの)確率を、2で計算して得られたシフトと近傍の遺伝子発現と比較することで、推定する。
4. 遷移確率は加重局所平均ベクトルに変換されて、転写因子(TF)の摂動に伴う各細胞の細胞状態遷移の方向性をシュミレートして表す。
最終的に、多次元の遺伝子発現シフトベクトルを二次元ベクトルに次元削減して、ノイズに対してよりロバストにするようにする。
この段階を経てシュミレートされる。 CellOracleは軸索中胚葉の文化に必要なTFの同定にも利用した。

新規性・進歩性:
CellOracleによるゼブラフィッシュのTFのノックアウトのシュミレーションによって脊索前板分化の亢進を予測した。→notoの継続的な発現がnotochordの分化に必要でないことを示した。

気になったこと・感想:
実際にゼブラフィッシュのTFのノックアウトのシュミレーションをして、その結果をウェットの実験でバリデーションしている点がいいと思った。

Code Availability: https://github.com/morris-lab/CellOracle


・マルコフ連鎖シュミレーションの実装の考察

単語:遺伝子摂動とは、一般に攪乱,変化のこと.ここでは反応をつかさどる酵素の量や活性を,人為的に変化させること.あるいは,人為的でなくとも酵素量や活性の変化に相当する作用のこと
notochord:最下等脊索動物と最下等脊椎動物、それに高等脊椎動物の胎児の体の支軸を形成する柔軟棒状組織。
noto: notochordの制御因子
axial mesoderm:軸索中胚葉
TSS database:http://homer.ucsd.edu/